ミルク神とサーカ神

昔、ミルク神とサーカ神が隣り合った村に住んでいました。
ミルク神は、「たくさん働こう、そうすれば幸せになる。」といい、

サーカ神は、「働いて苦労するより、人の物を取ればいい。」
といっておりました。

ミルク神のいる村は栄えているのに対し、
サーカ神の村は栄えませんでした。

それをおもしろく思わないサーカ神は、あるとき、ミルク神に賭けを持ちかけました。
「蓮華の花が先に咲いたほうが、好きな土地を取ることにしよう。」と。

ミルク神の蓮華が先に咲いたのですが、
薄目を開けていたサーカ神はこっそり花を取り替えると叫びました。

「私の花が先に咲いたぞ。ここから見える土地は全て私の土地だ。見えないところへ出て行け。」

すると、ミルク神はいいました。
「それはありがたい。見えない土地はみんなくれるのか。」

そこから見える土地は高い山ばかりでした。

ミルク神の土地は低い土地で、人がたくさん住み、作物もよく出来ました。

それで、ますますおもしろくなくなったサーカ神は、ネズミや猪を作り、ミルク神の土地を荒らさせました。
しかし、ミルク神は、猫を作ってネズミを退治させ、犬を作って猪を追い払わせました。

ある日、サーカ神は、生物達を集め、目隠しをすると、火を隠してしまいました。
火が使えないとなると、人間は煮炊きが出来なくなって困ってしまいました。

そこでミルク神は、島の生き物を集めると、聞きました。
「サーカ神が火をどこに隠したか見たものはいないか?」
「はい、私たちは見ました。」と、バッタとセミがいいました。

バッタとセミがは目隠しをされても、目が横についているため見えていたのです。
火は石に隠されていたので、それから人間は石を使って火をつけるようになりました。

ミルク神は、「このままここにいると、サーカ神に殺されてしまうかもしれない。」と思い、
向こうの島に渡りました。
その島はとても貧しい島だったのですが、ミルク神が来たおかげで、みなよく働き、立派に栄えるようになりました。

一方、サーカ神の島はいつまでたっても栄えません。
あるとき、サーカ神の島の人が、ミルク神の島がなぜ栄えているのか勉強しに行こうということで、船でその島に渡りました。

すると、船着場のすぐ近くの畑で、村人が言い争いをしていました。

「ああ、この島でもそんなことがあるのか。」と思っていると、
一人は、「ここは元々あんたの土地だからあんたのだ。」と、
もう一人は、「あんたは頑固で困る。それはあんたのだ。」と、譲りません。

サーカ神の島の人が、半分づつ取ったらどうだと尋ねると、ミルク神の島の人はこういいました。

「人のものを取ると損するからいやだ。」

これを聞いたサーカ神の島の人はあきれて帰っていきました。

ミルク神は今でも島で崇められているそうです。