八重山探検隊著『八重山の星』より 八重山の星を紹介

八重山の星

日本一の星空

八重山地方の夜空は21ある1等星全てを見ることのできる日本一の星空です。

88ある星座のうち84の星座を確認することもでき、
また、大気のゆらぎも少ないので晴れた日には、満天の星空を楽しむことができます。

星座・・・紀元前3000年ごろのメソボタミア(現イラク)の羊飼い達が夜空にきらめく星に星座を作ったことに始まります。

その後、多くの星座がいろいろな人によって作られましたが、1930年世界共通にしようと現在の88星座が決定されました。

星には1等星から6等星まであり、特に明るく見える星が1等星、やっと見えるぐらいの星が6等星です。

1等星は全部で21個あり、全てに名前がつけられています。
南十字星-サザンクロス-
北半球にある日本のうち八重山諸島だけが、12月ごろから6月ごろまで、南の方向、水平線の近くに南十字星を確認することができます。
天の川に夏の大三角形。おり姫(ベガ)とひこ星(アルタイル)が現れるのはこの時期です。

八重山の七夕

八重山の七夕は、ナンカソーロンといって、旧暦の7月7日に行われます。
その日には、お墓を掃除し「お盆には、どうぞおこしください」とご先祖様をご案内する日。
あの世への祈りがよく通じる日だと考えられ、法事などもよく行われる日です。
石垣島の桃林寺では、その日に地獄絵を飾っています。

『八重山のことわざ事典 宮城信勇』

なんか そーろんや ぐしょうぬ ななぞーあくん

  七日の精霊(お盆)は、後生の七つの門が開く
さそり座
夏の夜南の空にはさそり座が輝いています。ひときわ赤く輝く星が1等星のアンタレス。

ペルセウス座流星群
7月17日から8月24日にかけてペルセウス座流星群がみられます。夜空に流れる流れ星。あなたは、何をお願いしますか?
秋 八重山の星空
秋の夜空にはカシオペア座やペガスス座が輝いています。
北極星に近いカシオペア座は東の空から西の空へ、ほぼ一晩中輝いています。

北極星の探し方
北極星は、夜空の北側にあって動かないので、 北を知る目印になります。
昔の人や船乗りは、北極星を見つけることで、方角を知ることが出来ました。

冬 八重山の星空
冬の夜空には8個の1等星を確認することができます。
カノープス
南の空、いちばん低い位置にある1等星がカノープス。
中国では、カノープスをみつけた人は長生きできるといわれているそうです。

冬の大三角形
プロキオン、シリウス、ベテルギウス
冬のダイヤモンド
カペラ、アルデバラン、リゲル、シリウス、プロキオン、ポルックス

シリウスは1等星の中でも一番に明るい星、カノープスは2番目に明るい星です。
星見石・ほしみいし・
農作業の時期や季節を知るための観察用に使った石だと言われていますが、どのように使ったかは不明。

現在、石垣市新川と登野城の2箇所に残っています。
昼間星空が見えないときに、探してみてね。

画像:石垣市新川の星見石

星と天気

むかしは、農作業や航海のために、星を観察しました。

「梅雨」八重山の方言ではユドゥン
 むりぶしぬ ぺーるっか ゆどんぬ節
 (すばるが西の空にかくれると梅雨の季節がやってくる)という意味

ムリカ星(すばる)の観察によって梅雨を3つの時期に分けていました。

梅雨入り イリユドゥン ⇒梅雨入り5月初めにはスバルが宵の口に西に沈む。
       フタナカ  ⇒スバルが地平線に沈んで姿をかくす。
    
梅雨明け アーリユドゥン ⇒スバルが明け方東から上ってくる。

パイガ星(ケンタウルス座α,β)
南が星ぬ ゆねんまきた 踏むっかー 米苅ぬ最中
夕方パイガ星が真横にならんだ時期にお米の収穫をおこなう目安としていました。

 
[パイガプシのお話]


昔、おっぱいが4つあるマナビという娘がいました。
マナビはそのことを恥ずかしいと思っていましたが、心の優しい娘だったので、
良縁があり結婚することになり、可愛い二人の子供も生まれました。

ところが、国王がおっぱいの4つあるマナビのうわさを聞き、
マナビを首里につれてくるように命令、泣く泣く首里に行くことが決まってしまいました。

マナビは子供達に「もしも、私がこのまま二度と帰ることができなかったら、
私は星になって、あなたたちを見守っています。田植えの頃と稲刈りの頃、
南の空にふたつ並んでいる星を私だと思ってください。」
と、話しました。そして、二度と戻ってきませんでした。

マナビの言うとおり、田植えの頃には南の空にふたつ並んで輝く星があらわれました。
子供達は、星になったお母さんを想い「アブー(お母さん)」とよびかけました。
それから、α星とβ星のことを「パイガプシマナビアブー(南の星のマナビお母さん)」と
呼ぶようになったということです。


金星
金星は地球に最も近い惑星で、私達の生活にも密接な関係をもった星です。
夕暮れ西の空に見える時には『宵の明星』、明け方東の空に見えるときは『明けの明星』とよばれ、
親しまれています。
八重山地方にも金星の呼び名がいくつかあります。

シカマ星、フォイダマーブシ、アカツキブシ

与那国島のことわざで
シカマフチ アルタヤ ハタラギ(シカマ星・金星 が出ているうちは、まだ働きなさいの意)
昔の人は、金星が出ているうちから沈むまで、毎日働いていたのです。

フォイダマーブシとは、夕飯の時刻に現れる星だから、フォイダマー(くいしんぼう)の星と呼ばれました。

 波照間島の星空観測所
波照間島には日本最南端の星空観測タワーがあります。
周囲15kmの最南端の小さな島波照間島。人工の少なく、光害がすくないので夜になると満天の星空がひろがり、
観測に適した島です。
プラネタリウムや資料館があり、星座について学習することができます。

波照間島にも、星に関する伝説があります。

 
[アバアミ(油雨)伝説]


昔、周囲15kmの小さな島波照間島に、人口が増え、土地や食糧がたりなくなりました。
なかには、悪いことをして人の畑を荒らしたり、盗みをする人も出てきました。
怒った天の神様は、心の正しい一組の男女を海岸近くの洞穴に隠すと
アバアミ(油雨)を降らせて、島を焼け野原にしてしまいました。

生き残ったのは、心の正しい男女だけ。
二人は洞穴で子供をつくりましたが、最初の子供は毒を持った魚ミノカサゴでした。
二人は、陸に上がり近くの洞穴で二人目の子供を作りましたが、
今度は毒をもったムカデが生まれました。

そこで、二人は天の神様に祈りました。
どうぞ、可愛い人間の子供をさずけてくださいと。

すると、天にユツアシティ(四辺形星)がひときわ明るく輝きました。
二人は、その星を見て、4本の柱を立て家をつくり、
初めて人間の女の子を出産し、栄えたということです。

女の子はアラマリィヌパァ(新生の婆)と呼ばれました。


いしがき島星空宣言

わたしたちのふる里いしがき島は、豊かな自然に恵まれています。
満天の星も、わたしたちの祖先に恵をもたらしてきました。
人々は、星の動きで時の移ろいを知り、稲や粟の種をまき、
くらしを育んできました。

星にまつわる民話(みんわ)や古謡(うた)も多く、いしがき島は、星文化の宝庫といえます。

私達の住むいしがき島は、北緯24度20分に位置し、
全88星座のうち、84の星座を観察することができます。
南十字星も宝石のごとくきらめいています。

わたしたちは、満天の星空を大切にし、いしがき島の未来を担う
子どもたちに伝えたい。
地球のどこかで同じように星空を見上げる人々と想いを交わしたい。
何よりこの地球という星を大切にしたいと強く願いをこめて
ここに、いしがき島星空宣言をします。

一 見上げよう、満天の星空を。
一 伝えよう、星の文化を。
一 大切にしよう、美しい星空を。
一 未来へ残そう、豊かな自然を。

参照:八重山探検隊著『八重山の星』より