宮良長包生誕125周年記念公演 音楽劇「南国の花」

  

宮良長包生誕125周年記念公演 音楽劇「南国の花」

日程:2008年10月4日(土)、5日(日)    時間:午後6時30分開演(土)、午後2時開演(日)
場所:石垣市民会館大ホール

 石垣島が生んだ偉大なる作曲家、宮良長包の人生を描いた音楽劇「南国の花」。作品は過去に2006年4月に那覇市民会館で上演され、好評を得て、2年の歳月をかけてようやく宮良長包の出身地であるここ石垣島で公演が行われた。
 宮良長包の作品を知っている人は沢山いると思われるが、彼が生きてきたその歴史やなんかはあまり知られていないというのが現実だろう。その彼の人生というものを描き出した今作品で、私は「宮良長包」という存在を身近に感じ、又改めて彼の残した偉大なる軌跡に想いを馳せる事になった。
 戦時中という軍国主義の真っ只中においても、子供たちだけでなく、沖縄県民全てに対して音楽本来の魅力を伝えんとし、一生涯に渡って音楽に情熱を持ち続けた彼の人生がとても素晴らしくて人間味に溢れた人生であった事を知れただけでも実りある公演だったが、特筆すべきは一部の出演者を除き、出演者はもとい、ほとんどの公演関係者が地元石垣島の住民という、まさに石垣市民が一丸となって作り上げた公演であったという事に大いに感銘を受けた。

とぅばらーま大会   原作・脚本
  主演
  演出
  舞台監督
  音楽監督
  原曲
  編曲
 吹奏楽編曲   
三木 健
石垣 真秀
鹿川 幸祐
与那嶺 定
浦添 幸子
宮良 長包
瑞慶覧 尚子
祖慶 良順
主催:宮良長包生誕125年記念音楽劇公演期成会
 ■事務局:石垣市文化協会内 82-8419

【第一幕】
いよいよ公演が始まりざわざわとした中、出てきたのはまだあどけない表情の宮良長包少年期。大人を相手に民謡を歌い、堂々とした歌いっぷりで周りの大人を驚かせていたという。この宮良長包の少年役の子も劇が始まったばかりの頃は緊張した面持ちでいたのだが、いざ歌うとなると見事な歌いっぷりで観客の目を引いていた。
 
そして、宮良長包という主役を今回演じた石垣真秀さんの登場。本人自身が宮良長包の愛弟子であった糸洲長良の孫に当たるそうで、今回の公演に対しては特別な思い入れがあったであろうその面持ちは、まるで宮良長包がそこにいるかのような穏やかな表情で劇を見事にまとめあげていた。又、さすがプロの声楽家だけあってその歌声はとても素晴らしく、会場内の子供たちやオジーオバーのワイワイガヤガヤしていた雰囲気をガラッと変えてくれた(笑)
 
【第二幕】
そして、宮良長包の音楽家としてキャリアがいよいよ始まる。師範学校の音楽教師としてだけでなく、積極的に制作活動に取り組む。そうして出会ったのが、彼の作曲家としての才能を見抜き世間に広く伝えていった福井直秋だった。福井直秋は後に武蔵野音楽大学を創設した人物で、彼がいなければ宮良長包の音楽家としての才能は埋もれていたかもしれない。その福井直秋を演じていたのも沖縄の人で、言葉は標準語なのに訛りが石垣訛りという、あべこべな感じもこれまた市民公演としての面白さかと。
 
宮良長包の生涯において常に側で支えてきた妻、安津子の死は宮良長包にとって精神的に大きなダメージを与えたに違いない。又、当時の医療技術では「不治の病」とされていた結核になってしまい、子供までも失って、とうとう彼自身も倒れてしまう事になるとは... 遺言で、弟子たちに「沖縄の音楽を頼む」と言い残し、宮良長包はこの世を去った。


   宮良長包の遺した格言
 

◆最後は出演者も観客も一体となって「えんどうの花」を大合唱◆
とぅばらーま歌詞
演劇の最後は、宮良長包の曲の中でも最も石垣島の人にとっては思い入れのある「えんどうの花」を会場が一体となって大合唱。「えんどうの花」を聴くと、私は小中学校の頃の帰り道を思い出してノスタルジックな気分になる。あの頃、夕方になると登野城にある石垣気象台から流れる「えんどうの花」を聴いて、遊んだりしていても「もうそろそろ家に帰ろう」というような感覚があったからなのかもしれない。

今回の公演を通して私が感じたのは、石垣島の人は皆普段の生活の中で宮良長包の音楽を意識的にではなく、本当に自然と接していたんだろうなと。一人一人の石垣市民が、悪く言えば演技なんてやったことも無いような素人が、宮良長包という1人の同郷の人間の一生を描くという舞台の上で必死に頑張っているその姿がそれを見事に物語っていたように感じた。そして、それが最も如実に表れていたのが、最後の合唱のシーンだと思う。本当に出演者皆の顔がとても活き活きしてて、涙腺が緩んでウルッとした。

宮良長包、その存在は100年以上経った今でもなお、私たち石垣島の人にとってはとても大きな心の支えだ。


【宮良長包の作曲家としての一面をご紹介】
彼が作曲した作品で有名なのが「えんどうの花」をはじめ、全国各地の人でも一番よく知ってる沖縄民謡であろう「安里屋ユンタ」、そして沖縄民謡の定番としても労働歌としても歌い継がれている「汗水節」など、作品ひとつひとつが彼の作曲家としての才能の素晴らしさを物語っている。

写真01
写真02 写真03
「汗水節」の演奏に心躍る会場
山田耕作役の豊川正晃さん
アコーディオン演奏はいつ聴いても最高
ピアノ伴奏による宮良長包メロディー
CD化して欲しい位に素敵な演奏でした
写真04 写真05 写真06
主演の石垣真秀さんの歌声は凄かった
とても繊細でいて力強くさすがプロ!!

子供も大人も皆音楽が大好き
それが何よりも素敵な事

宮良家ではいつでも音楽が流れていた
その素敵なエピソードの1シーン
写真08 写真08 写真09
宮良長包作詞作曲「義士会の歌」
八重山吟道サークルによる熱唱
冒頭の1シーン
少年時代の宮良長包役の彼も良かった
市民会館内の宮良長包展示ブース
公演後は人だかりが出来るほど


取材/撮影 宮良 賢哉

掲載日:2008年10月6日

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