昔、石垣島の真栄里村の仲筋家にカナシという名の美しい娘がいた。石垣の士族の青年達はこのこの美しい娘を手に入れたいと競い始めた。夜になると、仲筋家の福木の木陰に隠れてカナシが出てくるのを待ちぶせしていたという。
毎日数人の男達が家の周りに隠れているので、彼女は怖くなり、両親と一緒に寝ていた。
何とかカナシと会って恋を語り合いたいと、夜毎、数ヶ月も通っていたが、とうとう最後まで会えなかった。
夜明け頃、待ちくたびれて帰る時、無念の思いから、「仲道路(ナカドーミツ)から七けら通ゆけ、仲筋カヌシャーマ、相談ぬならぬ」と唄った失恋の歌が“とぅばらーま”の始まりだといわれている。意味は「仲道路から数十回もかよったが
仲筋家のカナシ美人は一度も顔を見せてくれなかった」
ということ。
それで、囃子の部分で、「イラ、ンゾシーヌ、トゥバラーマ ヨウ(ああ、可哀想な恋しき殿方たちよ)」と返し歌がされ
ているのである。
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